【介護コラム】勝ち逃げー第2話ー

第2話
サービス内容はいたってシンプルで、朝、昼、夕に訪問し、体調や気分に応じたメニューで食事を作り提供。食べ終わったら食器を片付けて、食後の薬を本人が飲むのを見届け、頓服で処方されている鎮痛剤(医療用麻薬)が減っていないか残数を数える。それが済んだら記録と申し送りノートを書いて退室する。
ある程度現場慣れした人が見たら、拍子抜けするくらいのボリュームである。それでも訪問介護が初めてだった私は、そらで言えるほど繰り返し手順書を読み込み、行ったこともない家の間取りを想像し、時間の許す限りイメージトレーニングを重ねた。
そして迎えた先輩ヘルパーとの同行日に、どこか胡散臭いものを見るようなあの目と出合ったのである。
何の根拠も証拠もないが、肌で感じた違和感。「歓迎されていない」と瞬時に察した。
同行についてくれた先輩ヘルパーは本人と同じ東北の出身。
その二人のやり取りを、例えば街中で偶然見かけたのであれば微笑ましい光景なのだが、介護の現場で見るそれは、「そこから先には踏み込ませないからな」という、本人からの宣戦布告かのように私には映っていた。