【介護コラム】その日が一日でも先であるようにー最終話ー

グループホームに住む認知症の男性とヘルパーとの実話
一日でも先でありますように、この一文で手紙を締めくくった矢先、私からの連絡を受けたそうだ。娘様からの第一声が感謝の言葉であったこと。T氏との最期が口論になってしまったことがとにかく悔しくて、自制しきれず涙があふれてきた。お疲れ様とホーム長に背中を叩かれことをきっかけに、更に嗚咽まで混ざり、もうどうにも収拾がつかないまま、ステーションから出られずになき続けた。
それから1年ほどして私はグループホームを退職した。勤めていた期間は3年弱。この間に今の私の基礎が出来上がったといっても過言ではない。認知症を含め、高齢者の介護と向き合うとはどういうことなのかを学ばせてもらった。一遍だけを見て知っているつもりになってはいけない。介護をやりきるということは本当に難しいことだと、これでもかというくらいに思い知らされた。それでも、振り返ってみればいつも楽しいことばかりが思い出される。本当に尊い仕事だと感じている。今でも娘様とは年賀状のやり取りを続けている。そこにはいつでも労いの一筆が添えられており、10年経っても尚、心配をかけていることを照れくさく思うのである。